私が Kiwi Ears Quintet を手に入れたのは、音楽のためじゃなかった。
「ASMRに強い。FF14のサウンドが段違い。定位がとにかく良い。」
そんなレビューを見かけて、気づいたらAmazonのカートに入っていた。定位の良さと、ゲーム中のサラウンド感・・・それが一番のお迎え理由だった。
届いた箱を開けて、手に取ってプレイリスト流した瞬間の第一印象。思ったよりずっと素直な顔をしているな、と思った。
- 音楽鑑賞のためじゃなく「音の地図を引く」ために生まれてきた、素直なイヤホン
- ASMR・FF14プレイで、定位の良さは本物だと確認できた
- 今の基準で音楽鑑賞を主軸に求めると、少しだけ眠い表情を見せる——それも正直に語ります
スペック・付属品
まずはスペックから。少しだけ「変態スペック」なのでちゃんと見てほしい。
| ドライバー構成 | 1DD(10mm DLC振動板)+ 2BA(Knowles)+ 1平面駆動(Planar)+ 1PZT(圧電)= 4種5基(五重奏 Quintet!) |
| インピーダンス | 32Ω |
| 感度 | 106dB |
| コネクタ | 0.78mm 2pin |
| 付属ケーブル | 銀メッキ銅ケーブル(3.5mm) |
| シェル素材 | 3Dプリント樹脂(医療グレード)+金属フェイスプレート(アルマイト加工) |
| 価格帯 | A20kクラス(当時の実勢価格 $220前後) |
1DD・2BA・1Planar・1PZT。4種類・5基のドライバーが、一つのシェルに同居している。
「凄過ぎドライバ盛りだくさん!」とは言いたくないけど——A20kクラスでここまでやってくるKiwi Earsさんへの、静かな敬意は感じる。
付属品について
ケーブルは質感もしっかりしていて、「とりあえずオマケで付いてくる」感はないし、イヤホンケースもしっかりしてるよ。
イヤーピースは標準的な2種の3サイズがついてくるよ。品質は可もなく不可もなしかな。私はAZLA SednaEarfit MAXに変えてるけど・・・。
かれるみ見た目は地味めだけど、手に取ると「あ、ちゃんと作られてる」とわかるよ。
「骨伝導が特徴」という話について
Quintetの他のレビューを調べると「骨伝導振動子(圧電ピエゾ素子・PZT)搭載で、響きが独特」という記事をよく見かける。確かにそう書かれているんだけど・・・正直に言うと、私は言われないと気づかないレベルだと思う(笑)。
耳に当てて「あ、骨に来てる」と分かるような効果ではなく、音色の味付けとしてピエゾが仕事をしているのかな、という印象。「骨伝導すごい!」を期待すると肩透かしかもしれないので、そこは正直に伝えておきたい。


外観・ビルドクオリティ
シェルは3Dプリント樹脂製。フェイスプレートのみ金属(アルマイト加工)で、派手さはないが実直な作り。
フェイスプレートはシンプルで、ロゴが控えめに入っている程度。「主張しすぎない」デザインは、長時間つけていても飽きにくい。
装着感は良好。角のない丸みのある形状で、耳に自然に収まる。樹脂シェルは軽く、金属フェイスプレートのひんやりとした感触が手に取った瞬間の印象を良くする。圧迫感はほとんどない。




音質レビュー:FF14での毎日のエキルレ、機工士で走りながら試す
全体の印象は——「冷静で実直な、音の地図」。
この子は音楽の熱量を伝えることより、音の場所を正確に教えることを優先している。そんな設計思想が、使っていると伝わってくる。
FF14エキルレ、機工士の視点で
エキルレ(コンテンツルーレット:エキスパート)を機工士で走りながら、Quintetの定位の良さを試した。
フルメタルバーストを発動する。
機工士で一番気持ちよい時のスキルなんだけど、SEがとにかく気持ちいい。ドドドオォン・・、お腹の底まで届く爆発音。Quintetで聴くと、その爆発音の「芯」がちゃんと届いてくる。量感が多い低域ではないけれど、この一発のためにちゃんと低音の土台が用意されている、そういう感覚。
「もう少し低域が沈み込んでくれたら、さらに気持ちいいかもしれない」それが正直なところ。でも、十分に満足できる音だった。
ロボ(オートマトン・クイーン)を起動する。
ロボが動き繰り出す機械的なズカーン!というSEが、自分のすぐ横から聞こえてくる。ロボが動き回りながら自動で攻撃を続けるので、ゲーム内の音源が一気に増える。
でも、混ざらない。
自分のスキルSEと、ロボのSEと、ボスのSEと——それぞれが、ちゃんと自分の居場所を持っている。「これはどこから来た音だ?」と迷わずに済む。それが、Quintetをゲーム用途で使うことの一番の価値だと思う。
音楽を聴いた時の、正直な話
エキルレが終わって、リムサロミンサのエーテライトプラザに帰りいつものBGMに戻る・・・。
「あ・・・少し、落ち着きすぎかな」と感じる瞬間がある。
スキルSEの粒立ちは得意でも、音楽の「熱量」とか「迫り来る感じ」は、少し控えめ。ゲームでこれだけ「地図を描く」ことに特化している分、音楽で「体温を感じる」のは、もう一歩だと思う。これは欠点ではなく、ただの正直な特性の話。


ベンチマーク試聴:fripSide「regret」
試聴環境: FiiO M21(4.4mmバランス、 ハイゲイン設定)イヤピ:AZLA SednaEarfit ORIGIN Crystal2
ベンチマーク曲に選んだのは、fripSide「regret」。
切ないメロディーが静かに積み重なり、南條愛乃(よしのん)さんの艶っぽい歌声がゆっくりと浮かび上がってくる一曲。「どこまで寄り添ってくれるか」を問いやすい、私のリファレンスのひとつ。
高域:付属ケーブルだと、少し鋭い顔を出す
「regret」はデジタルシンセの高域成分が細かく重なる曲ではないけれど、付属ケーブルのままで聴くと、高域の音が時折思ったより鋭く飛んでくる瞬間がある。
「刺さる」と断言するほどではないかもしれないけれど・・・高域が少し前に出すぎていて、長時間聴いていると気になってくる感じがあるかな。ケーブルを替えると印象が変わりそうだな、という予感が正直なところ。
ボーカル・中域:定位は正確、でも艶まではもう一歩
音の骨格は正確に聴こえてくる。よしのんの声の「場所」は、ちゃんと分かる。
ただ、あの歌声が纏うような「空気の色気」まではもう一歩、届かないかもしれない。語尾の余韻がふっと消える前の、あの儚い間・・・そこまで追いかけようとすると、Quintetの表情は少し平静すぎる。
時折、ボーカルも付属ケーブルだと、少し鋭く感じる瞬間がある。「regret」は切ない曲なのに、どこか冷静に頭に届く・・・そんな感じ。



よしのんの声の「色気」を最前列で感じたいなら、ケーブルを替えるかあるいは他の子を選ぶか、ということになるかも。骨格はちゃんと届くのだけど。
低域:タイトで引き締まっている、量はあまり多くない
低域は量感重視ではなく、タイトで引き締まったタイプ。ベースラインの動きを追うことはできるが、深く沈み込むような低音ではない。
「regret」の静かなシンセベースが土台を作る部分も、暴れずに整然と座っている。それが上品でいいとも言えるし、もう少し深みがほしいとも感じる・・・そのどちらも本音。
分離感:全体的に良好
シンセ・ボーカル・ベース、それぞれが自分の居場所を持っていて、音が混ざらずに聴こえてくる。分離感はQuintetの得意分野のひとつで、多ドライバー構成の恩恵がここには確かに出ている。
「regret」のような多重にシンセが静かに重なる楽曲で、各パートを分離がきちんと聴けるのはありがたい。
比較:AFUL Performer7とGEEKWOLD GK20Proと並べてみる
| 比較機 | 価格帯 | 個性のひとこと | Quintetと比べると |
|---|---|---|---|
| AFUL Performer 7 | A20k〜(同価格帯) | 透明で邪魔しない、ながら聞きのパートナー | 音楽的な自然さでP7が一枚上手。ゲーム・ASMR定位ではQuintetに軍配 |
| GEEKWOLD GK20PRO | A10k(Quintetより低価格) | 全員主役、音の洪水、ピエゾ2基の閃光 | 音場の広さとASMR定位はQuintet優位。高域の輝きと情報密度ではGK20Proが圧勝 |
vs AFUL Performer 7
P7は「聴き手に分析させるのではなく、音楽を楽しませる」という設計の透明さが持ち味。思考の邪魔をしない、空気のような私のパートナー。
Quintetも疲れにくい系統ではあるけれど、P7は音楽的な全帯域のバランスが自然で、ながら聴きでの心地よさが一枚上手。一方、ゲームやASMRでの「立地の明確さ」という点では、Quintetのほうが特化している印象を受ける。
「P7は生活に溶け込む透明な風景。Quintetは用途を絞った、精密な地図。」
vs GEEKWOLD GK20PRO
GK20Proは、正反対の個性を持つ子。A10kクラスながら4種7基の全員主役サウンドで、ピエゾ2基の高域が冴え渡る。音の洪水の中でボーカルが一歩引く設計。
Quintetは音場が広く、ASMR定位はGK20Proより上・・・そもそも私のGK20Proレビューでも、「ASMR専用ならQuintet」と書いた程度には、その差がある。
GK20Proの高域の輝きは圧勝。でも、長時間のゲームプレイや静かなASMR鑑賞では、Quintetの落ち着いた定位感が活きる。
「Quintetは地図を描く静かな知性。GK20Proは花火を打ち上げる派手な情熱サウンド。」



音楽鑑賞ならP7が一枚上手。情報の洪水を浴びたいならGK20PRO。でも、ゲームやASMRで「音の居場所を知りたい」という用途なら、Quintetは今も一線に立てると思う。




かれるみ★評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 低域 | 3.0 | 締まっているが量感は控えめ。タイトだけどちゃんと届く |
| 中域・ボーカル | 3.0 | 定位は正確。艶より「位置」を教えてくれる |
| 高域・シンバル | 3.0 | 付属ケーブルでは時折刺さりあり。リケーブルで変わるよ |
| 分離感・解像度 | 3.5 | 多ドライバーの恩恵あり。全体的に良好 |
| 音場・定位 | 4.0 | ASMR・ゲーミング用途での真骨頂 |
| ビルドクオリティ | 4.0 | 樹脂シェル+金属フェイスプレートの実直な作り |
| 装着感 | 4.0 | 耳に良くフィットして長時間疲れない |
| 付属品・コスパ | 3.0 | 必要十分。特筆すべき驚きはないが堅実 |
| 総合 | 3.0 | 目的が合えば、今も一線級の立ち位置だけど2026年の今の評価として・・・ |
総合評価: 3.0



定価で新品を手に取るかどうかは、自分の「主軸」がゲーム・ASMRかどうかで決まると思う。そこに合致するなら◎。あとは中古で程度良いのあればポチるのもいいかもね。
こんな人にKiwi Ears Quintetはおすすめ!
- ASMRを日常的に楽しんでいて、音の立体感を大切にしている人
- FF14やゲームのサラウンド感に、もっとこだわりたい人
- 長時間使っても耳が疲れないイヤホンが欲しい人
- 「音の場所を知りたい」という用途が明確にある人
こんな人には向かないかも
- 複数ボーカルユニットのハーモニーを「鮮明に、近くで」聴き込みたい人
- 女性ボーカルの艶や息遣いを最優先にしている人
- 音楽鑑賞をメインに、全帯域の熱量を感じたい人
まとめ:Quintetの正直な顔を、ちゃんと伝えたかった
Kiwi Ears Quintetは、悪いイヤホンじゃないよ。
ただ・・・私が最初に求めたものと、今の私が求めるものが、少し変わってしまった。それだけの話。
音の地図を描く力は、今も本物。エキルレを走りながら、フルメタルバーストの爆発音を気持ちよく聴かせてくれる誠実さは、確かにこの子にしかない個性だと思う。
ASMRやゲームを主軸に置いている人には、今も十分に推せる。でも、音楽を「体温ごと感じたい」なら、他にもっとその温度を分けてくれる子がいるはず。
どちらの顔も、ちゃんと知った上で、選んでほしい。



音の地図を引くために生まれてきたイヤホンだね。その地図の正確さは、今も一線級だよ。


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