世の中の絶賛レビューと、自分の耳の「真実」が残酷なほどに乖離する……。
ポタオデをやっていると一度は通る、けれど最も避けたい道ですよね。
「ライブハウスのような迫力」という言葉が、私にとっては「ボーカルの不在」を意味してしまったとき、初めて気づいたのです。レビューの評価軸と、自分の好みは必ずしも一致しないということに。
このブログでは、世間の評価ではなく、私の耳の真実を綴っていきます。
あなたの「好き」とは違うかもしれません。でもだからこそ、このブログが「比較の軸」として機能すれば嬉しいです。
私の聴き方の「軸」
まず、私がオーディオ機材を評価する際の「軸」を整理しておきますね。
絶対に譲れないポイント
1. ボーカルの定位
「息遣いが聞こえる距離感」が好きです。
ボーカルが「そこにいる」と感じられる、近接感のある音。歌い手の感情や、呼吸の揺らぎまで伝わってくる音が理想です。
2. 音場の解像度
楽器が「どこにいるか」が見える音。
左から聞こえるギター、右奥にいるシンバル、中央前方に立つボーカル. その配置がはっきりと見えることで、音楽の「風景」が立体的に浮かび上がります。
3. 自然な音色
派手さより、長時間聴いても疲れない音。
無理に盛られた低音や、刺激的すぎる高音は、最初は「すごい」と思っても、結局は手が伸びなくなってしまいます。
私にとっての地雷ポイント
1. 低音の「迫力」でボーカルが埋もれる
迫力という名の過剰な低音によって、一番聴きたいボーカルが後退してしまう音は、私にとって致命的です。
2. 刺激的すぎる高音
キラキラしすぎる高音は、最初は華やかに感じても、すぐに耳が疲れてしまいます。
3. 音場が広すぎて、近接感が失われる
音場が広いこと自体は悪くないのですが、広すぎてボーカルが遠くなってしまうと、私の求める「距離感」が崩れてしまいます。
お気に入りイヤホンと「役割」
イヤホンを「上位互換」で選ぶのではなく、それぞれの「役割」で選んでいます。
どんなに優れたイヤホン・機材でも、すべてのジャンル、すべてのシチュエーションで最高というわけではありません。だからこそ、役割を明確にして使い分けていることで、それぞれの機材が最も輝く瞬間を楽しんでいます。
常用メイン:AFUL Performer 7 (2DD+4BA+1MP)
役割: 日々の生活に最も寄り添うワークホース
本音: ハイハットの描写に僅かな課題を感じつつも、トータルでの信頼感から一番長く使っています。
完璧ではないけれど、最も「手が伸びる」相棒。
朝の通勤、昼休みの息抜き、夜のリラックスタイム。どんなシーンでも安心して音を任せられる、そんな存在です。
リファレンス:ZiiGaat Luna (6BA)
役割: 音の判断基準となる透明な視界
本音: 視界を澄ませる透明感。ただし、耳の内圧(圧迫感)との対話が必要な日も。
音の「真実」を知りたいとき、このLunaに持ち替えます。曇りのないクリアな音場が、機材の実力を正確に教えてくれる。でも、その透明感が時に圧を感じさせることもある。
バンド特化:DUNU DaVinci (2DD+4BA)
役割: バンドサウンド専用のスペシャリスト
本音: 2DD+4BAが生み出す密度と余裕を、ドラムやベースのグルーヴを味わうためだけに解放する贅沢。
特定のジャンルにだけ全力を注ぐ、贅沢な選択。
陰陽座や、ギターリフが印象的なバンドサウンドを聴くときだけ、このDaVinciに持ち替えます。その瞬間、音楽の密度が一気に濃くなる感覚が堪らないのです。
音の土台:FiiO M21
役割: どんな時も一緒にある、音の判断基準となるメイン音の土台
本音: すべてのイヤホンをこの音の土台で鳴らすことで、比較の軸がブレない。
機材を評価する際、音の土台が変わると音も変わってしまいます。だからこそ、ブレない基準としてM21を使い続けています。
評価を支えるプレイリスト
イヤホンの実力をチェックするために、必ず聴く楽曲があります。
このアーティストの曲を聴けば、そのイヤホンの「得意」と「苦手」がはっきり見えてきます。
GARNiDELiA
評価ポイント: ボーカルの艶と力強さの再現性
見ているところ: MARiAさんの声の厚みと、エッジの立ち方。
繊細さと力強さが同居するMARiAさんのボーカル。この両方がバランスよく再現されるかどうかで、イヤホンのボーカル表現力が分かります。
ClariS
評価ポイント: ハーモニーやユニゾンの分離感と、繊細な質感の描き分け
見ているところ: 複数の声が混ざらず、かつ美しく溶け合う瞬間。
ハーモニーが「ひとつの塊」になるのではなく、それぞれの声が独立しつつも調和している——その繊細なバランスが聴こえるかどうかがポイントです。
fripSide
評価ポイント: 音数の多いデジタルサウンドを、いかに整理して鳴らし切るか
見ているところ: 低音の厚みとボーカルの前後関係、シンセの定位。
電子音が複雑に絡み合うfripSideのサウンド。この音数の多さを「ごちゃごちゃ」ではなく「立体的」に鳴らせるかどうかで、解像度と音場の実力が分かります。
陰陽座
評価ポイント: バンドサウンドの総合力(ドラム・ベース・ギターのグルーヴと、ボーカルの存在感)
見ているところ: 重厚なリフの中でボーカルが埋もれずに「前にいる」か、ドラムの迫力とベースの土台がしっかり聴こえるか。
和風メタルの複雑な音作り。重厚な低音の中でも、黒猫さんのボーカルが前に立っているか——「迫力」と「ボーカルの定位」を両立できているかが一発で分かります。
ケーススタディ:DUNU ITO — 学んだ「失敗」
世の中の絶賛レビューと、自分の耳の「真実」が残酷なほどに乖離する……。
私にとって、その象徴がDUNU ITOでした。
期待
「ライブハウスの熱狂」という評価に惹かれました。
バンドサウンドを迫力いっぱいに楽しみたい。そんな期待を抱いて手にしたイヤホンでした。
現実
しかし、実際に聴いてみると、過剰な低音により、ボーカルが完全に後退していました。
「迫力」が、私の求める「距離感」を破壊してしまったのです。
一番聴きたいボーカルが埋もれてしまう音は, 私にとって最も遠い音のイヤホンでした。
決断と学び
違和感を抱えたまま使い続けるのではなく、即座に売却しました。
この経験が、「ボーカルの定位」という軸を明確にしてくれました。
有名レビュアーが絶賛していても、私の耳が「ノー」と言えば、それが私にとっての正解です。
私の機材たち
現在の機材たちを、役割とともにまとめてみます。
| 立ち位置 | 機材名 | 役割と「本音」 |
|---|---|---|
| 普段使い | AFUL Performer 7 | 日常のワークホース。完璧ではないが、最も信頼している。 |
| リファレンス | ZiiGaat Luna | 透明な視界を与える基準機(6BA)。ただし内圧との対話が必要な日も。 |
| バンド特化 | DUNU DaVinci | バンド専用。密度と余裕を特定ジャンルに全振り。 |
| 売却済み | DUNU ITO (過去) | ボーカルの埋もれを許容できない自分を教えてくれたイヤホン。 |
| DAP | FiiO M21 | すべての音の判断基準。ブレない軸。 |
この記事で紹介したイヤホン・DAP
レビューポリシー
- 正直に書く
→ 良い点も悪い点も、実際に感じたことをそのまま - 主観を隠さない
→ 「私にとっては」を明確にする。万人向けの評価は書かない - 違和感は即座に言語化
→ 使い続けて慣れるより、最初の違和感を大切にする
このブログでは、以上のスタンスでレビューを書いていきます。
終わりに:このブログを読んでくださる方へ
私のレビューは、あくまで「私の耳」というフィルターを通したものです。
あなたの「好き」とは違うかもしれません。
でもだからこそ、他のレビューと比較することで、自分の耳の輪郭が見えてくるはずです。
このブログが、あなたの「好き」を見つけるための、ひとつの道しるべになれば嬉しいです。